医療を受けた際、医療機関に支払う医療費のことを「診療報酬」といい、2年ごとに見直され、内容や金額が変更されています。2024年度は診療報酬改定の年にあたり、6月から変わるところがありますので、皆さんの身近なところからご紹介します。
診療報酬改定は、これまで3月にその内容が確定し、4月に施行されていましたが、医療機関や関係する企業の負担軽減のため、今回の改定から6月へと変更されました。なお、診療報酬にあわせて薬価も改定されますが、こちらは診療報酬に比べて現場の負担が少なく、6月にするとかえって混乱を招くため、従来どおり4月からの施行となりました。

医療DXの基盤となるマイナ保険証を推進
医療におけるデジタルトランスフォーメーション(医療DX)*の一環として、患者がより質の高い医療を受けられるようにするため、そして医療現場の業務負担を軽減するため、予防接種や健診、診療、薬、介護などの生涯にわたる医療データを一元化する仕組みが構築されつつあります。その基盤となるのがマイナ保険証です。
*デジタル技術で業務やシステム、データの外部化・共通化・標準化を図り、より良質な医療やケアを受けられるように社会や生活のスタイルを変えること。
今回の診療報酬改定では、マイナ保険証の利用促進のため、オンライン資格確認等システムで診療情報等を取得する医療機関の加算も見直されました。マイナ保険証を利用すると、従来の保険証で受診するよりも初診料が20円安くなります。
医療情報 取得加算 |
初診の場合 | 再診の場合 |
---|---|---|
従来の保険証 | 30円(-10円) | 20円(+20円) |
マイナ保険証 | 10円(-10円) |
10円(+10円) |
診察料・入院料などがUP
医療DXの推進の他、医療従事者の人材確保や賃上げを実現するため、初診料・再診料、入院基本料などが引き上げられました。また、医療機関等の賃上げの取り組み状況によって加算される仕組み(ベースアップ評価料)も新設されました。
初診料 | 再診料 | |
---|---|---|
医科 | 2,910円 (+30円) |
750円 (+20円) |
歯科 | 2,670円 (+30円) |
580円 (+20円) |

ジェネリック医薬品やバイオシミラーも推進
6月からは、ジェネリック医薬品を多く使用する医療機関に加算される「後発医薬品使用体制加算」の引き上げ、バイオシミラー*についても「バイオ後続品使用体制加算」が新設されました。ジェネリック医薬品と同じく、バイオシミラーを多く使用した医療機関に加算がつくことで、利用促進を図るのがねらいです。
*細胞や微生物などの生物の力を利用してつくられる「バイオ医薬品」の特許期間が切れた後、他の製薬会社から発売される薬のこと。「バイオ後続品」ともいいます。
また、10月からは、患者が希望して先発医薬品を使うと特別料金がプラスされます。医療上の必要性がないのに、患者が「ジェネリック医薬品ではなく先発医薬品を使いたい」と希望した場合、先発医薬品とジェネリック医薬品の差額の1/4を患者が実費で支払う仕組み(選定療養)が導入されます。ただし、医療上の必要があって先発医薬品を使った場合、在庫状況などからジェネリック医薬品の調剤が困難な場合などは、全額、健康保険が適用されます。

生活習慣病を効果的に管理するために
今回の診療報酬改定では、生活習慣病をより効果的に管理して、重大な病気を予防するための見直しも行われました。糖尿病、脂質異常症、高血圧症の患者が増えていることに対応するため、これまでの「特定疾患療養管理料」からこの3疾患を除外、検査等を含んだ「生活習慣病管理料」が「生活習慣病管理料(Ⅰ)」に名称変更され、検査等を含まない「生活習慣病管理料(Ⅱ)」が新設されました。
生活習慣病管理料(Ⅰ)が算定される診療を受ける場合、患者負担は増加することになりますが、医療DXに基づいた情報共有や3疾患の診療ガイドラインなどを参考にした質の高い疾病管理、歯科医師や薬剤師などと連携した疾病管理(努力義務)を受けられることになります。
生活習慣病管理料(Ⅰ) | |
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糖尿病を主病とする場合 | 7,600円(+400円) |
脂質異常症を主病とする場合 | 6,100円(+400円) |
高血圧症を主病とする場合 | 6,600円(+400円) |
生活習慣病管理料(Ⅱ) | |
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6月から新設 | 3,300円 |
生活習慣病になる前に
「ヘルスケアプログラム」へ参加しましょう
今回の改定で患者負担は増えるものの、より質の高い生活習慣病管理が受けられるようになりましたが、そもそも生活習慣病にならないのが一番です。BIJけんぽでは、生活習慣病リスクの高い方に「ヘルスケアプログラム」をご案内しています。前回の「すこやかONLINE」で取り上げていますので、ぜひコチラもご覧ください。
厚生労働省は、ジェネリック医薬品の利用促進のための施策に積極的に取り組んでいます。
「ジェネリック医薬品お願いカード」は、日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会のホームページ(http://www.generic.gr.jp/)からダウンロードすることができます。また、ジェネリックに変更した場合の薬代については、Genecal(http://www.genecal.jp/)のサイトで調べることができます。

マイナ保険証利用のお願い
医療機関の受診時や調剤薬局ではマイナ保険証のご利用をお願いいたします。皆さんのマイナ保険証利用率の増加が、医療費の削減や健康保険組合から納付する支援金の減額に寄与します。健保財政の改善につながるよう、皆さんのご協力をお願いいたします。
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